でんさい割引とファクタリングの費用比較|取適法で手形がなくなった後の資金化手段

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結論

取適法で変わった支払いのルール

取適法の正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、令和8年1月1日に施行されました。公正取引委員会の説明資料と経済産業局のリーフレットによると、支払いについて次のルールがあります。

項目内容
支払期日受領日から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に定める
手形払い「支払遅延」に当たり、禁止
電子記録債権・一括決済方式・ファクタリング支払期日までに手数料等を含む満額の現金を得られないものは認められない
振込手数料合意があっても、受注者に負担させて代金から差し引くと「減額」に当たる
例外(リーフレットの説明)決済で一時的に手数料が生じても、事前の書面合意があり、支払期日までに発注側が補填して、期日に全額の現金を受け取れる状態なら問題にならない
遅延利息年14.6%

受注側から見ると、対象取引では「手形を割り引く費用」がなくなり、入金は受領から60日以内になります。発注側のルールは取適法の支払ルールで詳しく説明しています。

取適法の対象かどうかの判定

対象になるのは、発注側(委託事業者)と受注側(中小受託事業者)の規模の組み合わせが、次の基準に当たる場合です。

取引の類型基準発注側(委託事業者)受注側(中小受託事業者)
製造委託・修理委託・特定運送委託、一部の情報成果物作成・役務提供(プログラム作成、運送、倉庫保管、情報処理)資本金3億円超3億円以下(個人を含む)
資本金1千万円超3億円以下1千万円以下(個人を含む)
従業員(令和8年1月から追加)300人超300人以下
上記以外の情報成果物作成委託・役務提供委託資本金5千万円超5千万円以下(個人を含む)
資本金1千万円超5千万円以下1千万円以下(個人を含む)
従業員(令和8年1月から追加)100人超100人以下

※表は公正取引委員会の資料とリーフレットの要点をまとめたものです。従業員基準は、資本金の基準に当たらない取引でも対象になりうるように追加されたものです。資本金基準と従業員基準の組み合わせの細部は、公正取引委員会の資料と簡易診断ツールで確かめてください。

対象外の取引、たとえば発注側が自社より小さい会社や、取引の類型が当たらない場合は、従来どおり90日、120日といった支払サイトや、でんさいの長い期日が残ることがあります。資金化の手段を比べる意味が大きいのは、こちらのケースです。

でんさいの基本と費用

でんさいネットの電子記録債権は、期日まで保有するほか、譲渡や金融機関での割引に使います。割引には審査があり、料率・期限・買戻しの条件は取引金融機関で確認します。

三井住友銀行の現行公開ページ(ページ内の表示時点は2019年10月)では、当行宛て譲渡記録330円、他行宛て550円(税込)とされています。実際の割引の記録手数料は銀行と手続で異なります。多摩信用金庫 各種手数料(割引に伴う譲渡記録の注記)では、でんさい割引に伴う当金庫への譲渡記録は無料との注記があります。下の330円は比較用の仮定であり、すべての銀行で必ずかかる料金ではありません。

同じ100万円・45日で比べる

条件:100万円のでんさい(または売掛金)を、支払期日の45日前に現金にする。3社間ファクタリングは、売掛先の承諾に7日かかり、早める日数は38日とする。

手段条件費用年率に置き換えた目安
でんさい割引割引率1%(仮定)+譲渡記録330円1,563円1.27%
でんさい割引割引率2%(仮定)+譲渡記録330円2,796円2.27%
でんさい割引割引率3%(仮定)+譲渡記録330円4,029円3.27%
3社間ファクタリング手数料2%、38日20,000円19.21%
2社間ファクタリング手数料8%、登記なし80,000円(受取920,000円)64.89%(受取額ベース70.53%)
2社間ファクタリング手数料8%+登録免許税7,500円87,500円70.97%

計算式:でんさい割引の費用=額面×割引率×日数÷365+記録手数料(例:1,000,000×2%×45÷365+330=2,796円)。ファクタリングの費用=額面×手数料率+固定費。年率に置き換えた目安=費用÷額面×365÷日数。

※割引率は銀行と審査で決まり、公表されていないため、1〜3%は計算のための仮定です。でんさい割引の割引率は年率なので日数に応じて費用が決まり、ファクタリングの手数料率は1回あたりの率です。年率に置き換えた目安は比べるための数字で、法律上の利息ではありません(利息制限法・出資法との関係)。

金額・日数・率を変えて比べるには、ファクタリング手数料の年率計算ツールを使ってください。でんさい割引の割引率は入力が必要です。

取適法の対象外で、90日のでんさいを受け取った場合

取適法の対象外の取引では、支払期日が90日先のでんさいを受け取ることもあります。100万円を受け取ってすぐ割り引くと、早める日数は90日です。

割引の費用は日数に比例して増え、ファクタリングの手数料は日数によらず一定です。期日が先の債権ほど、年率の目安ではファクタリングが低く見えますが、円で見た費用の差は90日でも15倍以上あります。

使い分けの考え方

状況向く手段理由
でんさいで受け取っていて、取引銀行の割引枠があるでんさい割引費用が小さい。銀行の審査と、期日の3営業日前などの期限に注意
売掛金(振込)で、売掛先の承諾を得られる3社間ファクタリング2社間より手数料が低い傾向。承諾までの日数がかかる(2社間と3社間)
売掛先に知られたくない、急いでいる2社間ファクタリング費用は最も大きい。年率の目安で比べ、登記の有無も確かめる(債権譲渡登記の費用)
不足が2か月以上続く融資日数が長いほど、利息で払うほうが安くなりやすい(公的な資金繰り支援との比較)

取適法の対象取引で、発注側から「でんさいで払うが、期日前の現金化の費用は受注側の負担」と言われた場合は、支払期日までに満額の現金を得られるかを確かめてください。得られない形は、説明資料のルールに合いません。疑問がある場合は、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に相談できます(公的な相談窓口)。

手形からでんさいに変わったときの受注側の手順

  1. 取引ごとに取適法の対象かを判定する:上の表で、発注側と自社の資本金・従業員数、取引の類型を確かめます。
  2. 対象取引の支払期日を確かめる:受領日から60日以内になっているか。でんさいで受け取る場合は、期日までに満額の現金を得られる形になっているかを確かめます。
  3. 対象外の取引の期日を一覧にする:長いサイトのでんさい・売掛金が残る取引を洗い出し、資金が不足する月を出します。
  4. 取引銀行にでんさい割引の条件を聞く:割引の可否、割引率、手数料、期日の何営業日前まで使えるか、買戻しの定めを確かめます。
  5. 足りない分の手段を決める:割引で足りなければ、3社間・2社間ファクタリングや融資と、年率の目安で比べます。

よくある質問

Q. でんさい割引とファクタリングは、法的に何が違いますか?
A. どちらも、期日前に債権を売って現金にする点は同じです。でんさい割引は電子記録債権を金融機関に譲渡記録で譲渡し、ファクタリングは売掛金を会社に譲渡します。でんさいは譲渡記録によって譲渡の効力が生じる(電子記録債権法17条)ので、売掛金のように債務者への通知や債権譲渡登記を別に用意する必要はありません。

Q. 発注側から「でんさいで払う」と言われたら、断れますか?
A. 取適法の対象取引で、期日までに満額の現金を得られない形なら、説明資料のルールに合いません。対象外の取引では、支払方法は契約の交渉によります。迷う場合は、公正取引委員会や中小企業庁の窓口に相談してください。

Q. 割引率が分からないと比べられませんか?
A. 割引率は銀行の審査で決まるので、取引銀行に聞くしかありません。その前に、上の表のように1〜3%を仮に置いて、ファクタリングとの差の大きさをつかんでおくと、交渉の目安になります。

確かめること

  1. その取引が取適法の対象か(上の判定表)
  2. でんさいで受け取っているか、振込か。でんさいなら取引銀行の割引の可否・割引率・手数料
  3. 割引の期限(支払期日の何営業日前まで)と買戻しの定め
  4. ファクタリングを使う場合、手数料・固定費の総額と、早める日数で割った年率の目安
  5. 消費税:金銭債権の譲渡は非課税(国税庁 No.6201)。仕訳はファクタリングの仕訳と確定申告を参照し、税理士に確認してください。

法律の個別の判断は、弁護士や公正取引委員会・中小企業庁の窓口に確認してください。

出典(確認日:2026年10月27日)

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