ファクタリングの仕訳と確定申告|売上債権売却損・消費税の区分・登記費用の扱い
※この記事にはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を含む場合があります。確認日:2026年10月27日
結論
- 売掛金を売るファクタリング(買取型)は、「売掛金→未収入金」に振り替え、入金時に「普通預金+売上債権売却損(または支払手数料)」で消す仕訳が一般的です。以下の例では、元の取引の売上計上と請求が済んでいるものとし、ファクタリングで売上が増えたり減ったりはしません。
- 消費税:買取りの際の割引料・手数料は、国税庁の質疑応答で「名目の如何にかかわらず」金銭債権の譲受けの対価として非課税とされています(消費税法施行令10条3項8号)。仕入税額控除の対象にはなりません。
- 登記費用は中身で分けます。登録免許税は税金で消費税の対象外、司法書士報酬は課税です。「登記費用は課税」とひとまとめにするのは誤りです。
- 売掛金の譲渡額は、課税売上割合の計算に入れません(消費税法施行令48条2項2号)。
- 以下は一般的な例です。自社の処理は税理士か税務署に確認してください。
仕訳例(法人・2社間・登記あり)
例:売掛金1,000,000円を手数料8%で売却。債権譲渡登記の登録免許税7,500円、司法書士報酬30,000円+消費税3,000円(報酬額は説明用の仮の数字)。2社間なので、売掛先からの入金はいったん自社で受け取り、ファクタリング会社へ送ります。
| 時点 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 税区分の例 |
|---|---|---|---|---|---|
| 契約(債権の譲渡) | 未収入金 | 1,000,000 | 売掛金 | 1,000,000 | 対象外(振替) |
| 買取代金の入金 | 普通預金 | 920,000 | 未収入金 | 1,000,000 | |
| 売上債権売却損 | 80,000 | 非課税 | |||
| 登記の費用 | 租税公課 | 7,500 | 普通預金 | 7,500 | 対象外 |
| 司法書士への支払い | 支払手数料 | 33,000 | 普通預金 | 33,000 | 課税仕入れ |
| 売掛先からの入金 | 普通預金 | 1,000,000 | 預り金 | 1,000,000 | 対象外 |
| ファクタリング会社へ送金 | 預り金 | 1,000,000 | 普通預金 | 1,000,000 | 対象外 |
未収入金を通さず、入金時に「借方:普通預金920,000・売上債権売却損80,000/貸方:売掛金1,000,000」と一度で記録する方法もあります。売掛先からの入金を預かる科目は「預り金」のほか「未払金」とする例もあります。どの科目でも、毎期同じ処理を続けてください。
2社間では、売掛先から入ったお金はファクタリング会社のものです。帳簿でも売上の入金と区別しておくと、送金漏れを防げます。3社間なら売掛先がファクタリング会社へ直接払うため、最後の2行は不要です。
手数料の科目
手数料(売却額との差額)は、「売上債権売却損」とする例と「支払手数料」とする例があります。債権を額面より安く売った損という性質から、前者を使う解説が多く見られます。どちらでも損益(経費になる額)は同じです。
償還請求権付きの場合
売掛先が払わなかったときに買い戻す約束(償還請求権)がある契約は、会計上の扱いが買取型と変わることがあります。会計基準上の処理はこの記事では確かめていないため、具体的な仕訳は示しません。顧問の税理士・会計士に確認してください。なお、償還請求権があると、金融庁の言う偽装ファクタリング(実態が貸付け)に近づく点にも注意が必要です(償還請求権、ファクタリングの手数料に利息制限法・出資法はかかるか)。
仕訳例(個人事業主)
例:売掛金300,000円を手数料10%で売却(2社間・登記なし)。個人事業主は債権譲渡登記を使えないため、登記費用は出てきません(個人事業主・フリーランスのファクタリング)。
| 時点 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 契約(債権の譲渡) | 未収入金 | 300,000 | 売掛金 | 300,000 |
| 買取代金の入金 | 普通預金 | 270,000 | 未収入金 | 300,000 |
| 売上債権売却損 | 30,000 | |||
| 売掛先からの入金 | 普通預金 | 300,000 | 預り金 | 300,000 |
| ファクタリング会社へ送金 | 預り金 | 300,000 | 普通預金 | 300,000 |
事業用の口座を使っていない場合は、普通預金の代わりに「事業主借」「事業主貸」を使う処理になります。
費用の税区分
| 費用 | 消費税の区分 | 根拠・考え方 |
|---|---|---|
| 買取りの手数料(割引料) | 非課税 | 国税庁 質疑応答:金銭債権の譲受けの際の割引料・保証料・手数料は「名目の如何にかかわらず」譲受けの対価として非課税(消費税法施行令10条3項8号)。仕入税額控除はできない |
| 売掛金の譲渡そのもの | 非課税 | 国税庁 No.6201:「金銭債権などの譲渡」は非課税 |
| 事務手数料 | 契約で判断 | 買取代金から差し引かれ、譲受けの対価の一部なら上と同じく非課税。別の役務の対価として消費税を上乗せして請求されているなら、課税仕入れになりうる。請求書・契約書の記載で確かめる |
| 登録免許税 | 対象外(不課税) | 国に納める税金で、資産の譲渡等の対価ではない。国税庁「消費税課税取引の判定表」も、租税公課(印紙税など)や登記等の法令に基づく行政手数料を課税取引にならないものに挙げている |
| 司法書士報酬 | 課税 | 登記手続きの代行という役務の対価 |
| 振込手数料 | 課税 | 銀行の振込という役務の対価 |
仕訳ソフトで「支払手数料」に課税の区分が初期設定されていることがあります。買取りの手数料を支払手数料で記録するときは、区分を非課税に直してください。
課税売上割合での扱い
課税売上割合は「課税売上高÷(課税売上高+非課税売上高)」で計算します。売掛金の譲渡は非課税ですが、消費税法施行令48条2項2号により、資産の譲渡等の対価として取得した金銭債権(売掛金など)の譲渡は、この計算の分母に含めません。国税庁 No.6405 も、総売上高に5%を加える金銭債権から「資産の譲渡等の対価として取得したもの」を除いています。
つまり、売掛金をファクタリングで売っても、課税売上割合は下がりません。もともとの売上は請求した時点で課税売上として計上済みです。
個人事業主の確定申告
青色申告決算書のどこに書くか
青色申告決算書(一般用)の経費欄には、租税公課、荷造運賃、水道光熱費、旅費交通費、通信費、広告宣伝費、接待交際費、損害保険料、修繕費、消耗品費、減価償却費、福利厚生費、給料賃金、外注工賃、利子割引料、地代家賃、貸倒金、雑費などの印字された科目と、自分で科目名を書き込める空欄があります。
- ファクタリングの手数料:空欄に「売上債権売却損」または「支払手数料」と書いて記入する例が多いです。毎年同じ科目にしてください。
- 登録免許税(法人のみ。個人事業主は登記を使えません):法人の場合は租税公課。
- 振込手数料:支払手数料など。
国税庁の「消費税課税取引の判定表」(個人事業者向け)も、決算書の科目に沿って「支払手数料」の行を設けています。同じ表で「利子割引料」は「全て課税仕入れになりません」とされています。ファクタリングの手数料を利子割引料に入れても消費税の区分(課税仕入れにならない)は同じですが、債権の売却であって借入れの利子ではないため、売上債権売却損などで区別しておくほうが説明しやすくなります。科目の選び方は税理士か税務署に確認してください。
売上の計上時期は変わらない
売上は、商品を引き渡したり役務を提供したりして請求した時点で計上します。ファクタリングで早く現金化しても、売上の時期や額は変わりません。年をまたいで売掛先が支払う場合も、12月31日の時点で売掛金を売っていれば、決算書の売掛金には残りません(未収入金や預り金の残高を確かめます)。
消費税の申告
課税事業者は、上の表の区分で集計します。買取りの手数料は課税仕入れに入れません。簡易課税を選んでいる場合は、仕入れの区分は計算に使いませんが、売掛金の譲渡を課税売上に入れないよう注意してください。
上位記事によくある誤り
| よくある書き方 | 正しくは |
|---|---|
| 「債権譲渡登記などの費用は課税対象」 | 登録免許税は税金なので消費税の対象外。課税になるのは司法書士報酬のほう |
| 消費税がかかる例に印紙税を並べる | 印紙税は租税公課で、国税庁の判定表でも課税取引にならないもの |
| 非課税の理由を「有価証券の譲渡」とする | 売掛金は「金銭債権」。根拠は No.6201 の金銭債権の譲渡と、施行令10条3項8号(質疑応答) |
| 手数料を「支払手数料(課税)」で記録 | 買取りの手数料は名目にかかわらず非課税 |
確かめること
- 契約が買取型か、償還請求権付きか(処理が変わることがある)
- 見積書・精算書で、手数料・事務手数料・登記費用・振込手数料が分けて書かれているか
- 事務手数料に消費税が上乗せされているか
- 2社間で預かった入金を、期日どおりに送金したか(預り金の残高がゼロになっているか)
- 会計ソフトの税区分の初期設定
手数料の総額と年率に置き換えた目安はファクタリング手数料の年率計算ツールで出せます。会計・消費税の基本は会計・消費税、登記の費用は債権譲渡登記の仕組みと費用も参考にしてください。個別の処理は税理士か税務署に確認してください。
よくある質問
Q. 法人税では手数料を損金にできますか?
A. 事業のために売掛金を売った損として、損金として扱うのが一般的です。償還請求権付きなど契約の形によって処理が変わることがあるので、顧問の税理士に確認してください。
Q. ファクタリング会社から適格請求書(インボイス)をもらう必要はありますか?
A. 買取りの手数料は非課税で、もともと仕入税額控除の対象になりません。一方、司法書士報酬など課税仕入れになる費用は、控除を受けるために請求書等の保存が必要です。どの書類を保存するかは税理士か税務署に確認してください。
Q. 決算日をまたいで、売掛先の入金がまだのときは?
A. 買取代金を受け取っていれば、売掛金はすでに売っています。決算日に残るのは、2社間で売掛先からの入金を待っている状態か、送金前の預り金です。未収入金・預り金の残高が契約と合っているかを確かめてください。
出典
- 国税庁 質疑応答事例(消費税:金銭債権の譲受けの際の割引料・手数料の扱い) https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/06/03.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.6201 非課税となる取引(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6201.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.6405 課税売上割合の計算方法(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6405.htm
- 国税庁「消費税課税取引の判定表」(個人事業者向け) https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi_kojin/pdf/01-11.pdf
- e-Gov 法令検索 消費税法施行令(10条3項8号、48条2項2号) https://laws.e-gov.go.jp/law/363CO0000000360
- 法務省 債権譲渡登記の登録免許税 https://www.moj.go.jp/content/001178283.pdf
費用と契約条件を詳しく確認
- でんさい割引とファクタリングの費用比較|取適法で手形がなくなった後の資金化手段
- ファクタリング手数料の年率計算ツール|2社間・3社間・でんさい割引・公庫融資を同じ金額と日数で比べる
- ファクタリング手数料の相場を各社の公表値で確認|「〜%から」ではなく上限と平均実績で比べる
- ファクタリングの手数料に利息制限法・出資法はかかるか|年20%・109.5%の意味と「貸付け」とされた裁判例
- ファクタリングの仕訳と確定申告|売上債権売却損・消費税の区分・登記費用の扱い
- 個人事業主・フリーランスのファクタリング|登記できない理由、少額の下限、売掛先が個人の場合
- ファクタリングと公的な資金繰り支援の比較|公庫・セーフティネット保証・ABL保証を日数と費用で
- 診療報酬・介護報酬ファクタリング|支払基金・国保連の支払日から年率の目安を出す
- 注文書(受注書)ファクタリングの条件とリスク|対象企業・手数料・納品できなかったときの扱い
月額だけでなく、総額と条件も見てみよう。